「インプラントって一般的じゃないの…?」
そう感じている方も多いかもしれません。
実は、日本ではインプラントの普及率はまだそれほど高くなく、海外と比べると差があることがわかっています。
この記事では、日本におけるインプラント治療の普及状況と、海外との違い、その背景について紹介します。
■日本でインプラントをしている人の割合は?
まずは日本におけるインプラントの普及率から見ていきましょう。
厚生労働省が実施している「令和4年 歯科疾患実態調査」によると、15歳以上の日本人のうち、インプラントを装着している人は3.2%と報告されています。
年齢別に見ると、高齢層ほどやや割合が上がっており、たとえば70〜74歳では5.9%の方がインプラントを使用しているという結果でした。※1
■海外ではもっと当たり前?インプラントの普及率
一方、海外ではインプラント治療がより一般的になっている国もあります。
たとえばアメリカでは、米国疾病対策センター(CDC)の大規模な健康調査「NHANES」のデータに基づき、2015~2016年の成人のインプラント装着者割合は5.7%と報告されています。
年齢が上がるにつれてその割合は高くなり、65歳以上の層では12.9%に達しています。※2
また、ドイツでは、35~44歳で約3.4%、65~74歳で約8.1%、75歳以上でも約8.0%といった報告もあります。※3
※2:Trends in Dental Implant Use in the U.S.,
1999–2016, and Projections to 2026
※3:Differences in Dental Implant Maintenance
and Training in Germany and Israel
■なぜ日本ではインプラントが広まりにくいのか?
インプラントは「第3の歯」とも呼ばれ、噛む力や見た目の自然さから世界的に広まっている治療です。しかし、日本で思ったより普及が進んでいないのはなぜなのでしょうか。
その背景には、いくつかの要因があります。
保険が使えず、費用負担が大きいから
インプラントは基本的に保険が使えない「自由診療」に分類されます。
たとえば、保険が適用される入れ歯やブリッジと比べると、費用は10〜20倍以上になることも珍しくありません。
特別な症例(先天性の歯の欠損や、がんによる顎骨欠損など)を除けば、保険適用にはならず、すべて自費での負担となります。
一方で、保険内で対応できるブリッジや入れ歯が現実的な選択肢として残っているため、初めからインプラントを選ぶ方はまだ少数派になるのです。
高齢でも歯が残る人が増えてきたから
昔に比べて「歯を失う人」がそもそも減っている、というのも大きな理由です。
厚生労働省の調査(令和6年)では、80歳で20本以上の歯を保つ「8020達成者」は、なんと約6割に達しています。※4
つまり、入れ歯やインプラントが必要になる「歯の欠損」そのものが減っているのです。これはとても良いことなのですが、インプラント治療を選ぶ方の母数も自然と少なくなってきているともいえます。
※4:厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査」の結果(概要)を公表します
インプラントへの誤解や不安も根強い
「高そう」「痛そう」「本当に安全なの?」
インプラントに対して、こんな印象を持っている方は少なくありません。
実際、日本口腔インプラント学会の調査でも、多くの方が「高い」「怖い」「安全性が心配」といった不安を抱えていることがわかっています。※5
一方で、すでにインプラント治療を受けた方の多くは、「実際は思っていたより楽だった」「思っていたより痛くなかった」などの評価もあり、治療後に印象が変わったという声も多く寄せられています。※5
つまり、インプラントに対する不安は、正しい情報を知らないままイメージだけで判断してしまっているケースが多いのです。
もちろん、どんな治療にもメリットとリスクがありますが、
インプラントはきちんとケアすれば10年・20年と長く使える可能性がある、メリットの多い治療法です。
■インプラントはどんな治療?メリットも知っておきたい
インプラント治療は、歯を失った部分に人工の歯根を埋め込み、固定する治療法です。
見た目が自然で、しっかり噛めるのが大きな特徴のひとつ。
インプラント治療には以下のようなメリットがあります。
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他の健康な歯を削らずに済む
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噛む力を天然歯に近いレベルまで再現できる
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骨がやせるのを抑えやすい
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見た目が自然で、会話や食事もスムーズ
ただし、手術が必要になることや、治療後も定期的なメンテナンスが欠かせないといった注意点もあります。
それでも、世界中で長く使われている治療法だからこそ、日本でも「選択肢のひとつ」として正しい情報を知っておきたいですね。
■ライフスタイルや希望に合わせて歯科治療を選びましょう
現在、日本での普及率は約3~5%にとどまりますが、海外ではより一般的な選択肢となっています。
費用や制度の違いはあるものの、噛む力や見た目、長期的な機能維持を重視したい方にとって、インプラントは検討する価値のある治療法ではないでしょうか。
まずは、歯を失ってしまった場合にどのような治療法があるのか、自分にとってどれが合っているかを歯科医と一緒に考えていくことが大切です。