「歯ぎしりの癖があるけれど、インプラント治療って受けられるのかな…?」
そんな不安をお持ちの方も少なくありません。
実は、歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラントに大きな負担がかかり、破損や脱落のリスクが高まることがわかっています。
とはいえ、リスクを正しく理解し、対策することで、歯ぎしりがある方でもインプラント治療を行うことは可能です。
この記事では、歯ぎしりがインプラントに与える影響や、治療前後に気をつけたいポイント、長く快適に使い続けるための対処法を解説します。
目次
インプラントは天然歯と異なり、「歯根膜(しこんまく)」と呼ばれるクッション構造がありません。そのため、噛んだときの衝撃が直接インプラント体(人工の歯根)に伝わりやすいという特徴があります。
歯ぎしりは無意識に起こるため、自分ではコントロールできず、日中の咀嚼よりも強い力がかかることもあると言われています。
このような強い力が繰り返しかかると、以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
このように、歯ぎしりがあるとせっかく入れたインプラントを長く維持するのが難しくなることもあるのです。
インプラントを入れる場所によっても、かかる力の大きさやリスクには違いがあります。
特に注意が必要なのが「奥歯(臼歯部)」です。
奥歯は食事の際にもっとも強く噛む部位であり、前歯よりも強い力がかかります。
そのため、歯ぎしりの影響を受けやすく、インプラントへのダメージも大きくなりやすいです。
歯ぎしりをする方は、そうでない方に比べてインプラントの脱落や破損リスクが明らかに高いという研究結果があります。
たとえば、ある調査では、歯ぎしりのある方はそうでない方に比べて、インプラントが脱落するリスクが高くなると報告されています。※
※出典:PubMed:Bruxism and risk of dental implant failure: A systematic review and meta-analysis
インプラント治療において、事前の診査・診断はとても重要です。
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合、事前にそのリスクを見つけておくことで、トラブルを回避しやすくなります。
主に行われる検査は以下のようなものです。
たとえば、顎の骨量が不足している場合、インプラントが入れにくくなるため、骨造成(骨を増やす処置)を併用するなどの治療が必要になります。
歯ぎしりの影響を抑えるためには、インプラント1本あたりにかかる負担を減らす設計が有効です。そのためには、いくつかの工夫が考えられます。
力のかかり方は患者さんそれぞれ異なるため、全体のバランスを考えた治療計画が大切です。
歯ぎしりがある方の場合は、治療後もインプラントを良い状態で保つために、継続的なチェックとメンテナンスが大切です。
メンテナンス時には以下のような処置やチェックが行われます。
早めの対応によって、大きなトラブルを未然に防げます。違和感があれば放置せず、早めの受診がおすすめです。
寝ている間の歯ぎしりには、マウスピース(ナイトガード)の装着が効果的です。
やわらかい素材がクッションとなり、インプラントや被せ物へのダメージを軽減してくれます。簡単に装着でできる予防策として、導入を検討する価値は十分にあります。
歯ぎしりが強い方には、顎の筋肉(咬筋)へのボツリヌス注射がひとつの選択肢です。
筋肉の緊張を抑えることで、噛む力が弱まり、インプラントへの負担を軽減する効果が期待されます。
ただし、インプラント治療における効果は個人差があるため、歯科医師とよく相談して検討することが大切です。
歯ぎしりは、ストレスや睡眠の質とも関係しています。
就寝前のスマホやカフェイン、寝不足などが影響することもあるため、生活リズムを整えることが大切です。
ナイトガードや噛み合わせの調整とあわせて、生活リズムも意識していきましょう。
歯ぎしりがあると、インプラントに負担がかかりやすく、破損や脱落のリスクが高まることがあります。しかし、治療前の計画でしっかり対策し、治療後もケアを続けていけば、長く使い続けることは十分に期待できます。
やまもと歯科・矯正歯科では、CTによる精密な診断や、噛み合わせを考慮した治療設計など、歯ぎしりがある方にも安心して治療を受けていただける体制を整えています。 「歯ぎしりがあるからインプラントは無理かも…」と悩んでいる方も、まずは一度、お気軽にご相談ください。