
「好きなお肉を思い切り噛みたい」「入れ歯では食べにくかった物をもう一度楽しみたい」インプラントを検討中の方にとって、こうした願いは自然なことです。
インプラントは、しっかり噛める力を取り戻しやすい治療法ですが、天然歯とまったく同じというわけではありません。
この記事では、インプラントの噛む力の目安や、硬い食べ物との付き合い方、長く快適に使うためのポイントを解説します。
■インプラントは本当に何でも噛める?
まず「噛む力」のデータを確認しましょう。
ある咬合力研究では、正常な天然歯を100とした場合、補綴物別の噛む力は次のように示されています。
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固定性ブリッジ:約80%
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部分入れ歯:約35%
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総入れ歯:約11%
また、片側が天然歯、反対側がインプラントの方で最大咬合力を調べた研究では、天然歯側とほぼ同程度の力が出るという結果も報告されています。
こうしたデータから、インプラントは多くの食材をしっかり噛めるようになる可能性が高いことがわかります。ただし、数値はあくまで平均的な目安で、患者さんの骨の状態や咬み合わせなどで変わります。
※天然歯と各補綴物の比較(Miyaura らの研究)
J Oral Rehabil. 2014 Aug
■インプラントと天然歯の噛む力の違いとは?歯根膜の役割
噛む力の違いだけでなく、噛み心地の仕組みにも差があります。天然歯には「歯根膜」という薄い組織があり、噛んだときの力の強弱や硬さを脳に伝えるセンサーのような働きをします。
一方、インプラントは人工歯根が直接骨と結合するため、歯根膜がありません。結果として、力のフィードバックが少なく感じやすいのです。
この違いがあるため、インプラントでは無意識に強く噛んでしまい、被せ物の摩耗やネジの緩みにつながることがあります。歯ぎしり・食いしばりのある方は特に注意が必要です。
ただし「噛めない」という意味ではなく、数週間〜数ヵ月のうちに多くの方が新しい噛み心地に慣れていきます。慣れるまでの間はゆっくり噛むことを意識すると負担をかけにくくなります。
■インプラントで硬いものを噛むときの注意点
インプラントで噛む力が回復すると、次のような日常的な食事は多くの方が楽しみやすくなります。
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薄切り肉・よく煮込んだ肉類
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加熱した野菜・サラダ(カットして)
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パンの耳・トースト
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リンゴやキュウリ(スライスして)
こうした食材は、インプラントでも十分な噛む力で対応しやすく、避けがちだった方も食べやすさを実感しやすい例です。
ただし、次のような極端に硬い物や粘着性の高い物は控えめにするか、食べ方に工夫をした方が安全です。
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氷を噛む
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非常に硬い飴玉
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殻付きナッツ
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するめ・硬いせんべい
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キャラメル・餅など粘着性の高い食品
硬すぎる食品はインプラント周囲への過度な負担につながる可能性があります。ガムやキャラメルのように粘着性が高い食品は、頻度を抑えるか少量から様子をみるとよいでしょう。
食べ方の工夫としては、以下のポイントが有効です。
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一口サイズに小さく切る
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左右バランスよく噛む
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初めての硬い食材はゆっくり噛む
片側だけで噛む癖は、インプラントに偏った負担をかけてしまいリスクを高めます。
■噛む力が強すぎるとどうなる?メンテナンスが大切な理由
インプラントは噛む力がしっかり回復しやすい反面、噛み合わせのバランスが崩れた状態で強い力が加わり続けると、トラブルの原因になることがあります。
ある研究では過大な咬合力をかけた場合、周囲の骨が吸収されたり、インプラントと骨の結合が壊れたりする可能性があると報告されています。
そのため、治療後は噛み合わせを定期的に調整することが欠かせません。
歯ぎしりや食いしばりのある方は、ナイトガード(マウスピース)を使用することで、就寝中の負担を軽減しやすくなります。
また、見た目に問題がなくても、被せ物のゆるみや細かな摩耗は自覚しにくいため、歯科医院での定期的なチェックが必要です。インプラントの土台となる骨や歯ぐきの状態も、プロの診断でこまめに確認していくことが大切です。
■インプラントは何でも噛める?その答え
インプラントは、そのほかの治療法に比べて噛む力が高く、さまざまな食事を楽しみやすくなる治療法です。ただし、天然歯とは構造が異なるため、噛み方やメンテナンスには注意が必要です。
正しい使い方を知ることで、インプラントは食生活を支える心強い味方になります。
治療後の不安や疑問がある方は、やまもと歯科・矯正歯科までお気軽にご相談ください。
