
インプラント治療を検討していると、「CT検査って本当に必要?」「レントゲンとは何が違うの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、歯科用CTの特徴やレントゲンとの違い、インプラント治療における役割について紹介します。
CT検査の役割を理解することで、インプラント治療への不安を和らげ、より納得して治療に臨めるでしょう。
■インプラント治療の精度と安全性を高める「CT検査」とは?
インプラント手術では、顎の骨の厚みや形、神経や血管の位置を正確に把握することが非常に重要です。その診断に活用されるのが、「歯科用CT(コーンビームCT)」と呼ばれる三次元画像診断です。
レントゲンでは見えづらかった骨の内部構造や神経・血管の位置まで確認できるため、術前の治療計画をより安全かつ精密に立てることができます。
手術中に大切な組織を避けて処置できるようになることで、合併症のリスクを抑えながら、治療の精度を高めることにつながります。
■歯科用CTとは?インプラント治療で使われる立体的なレントゲン
歯科用CT(コーンビームCT)の仕組み
歯科用CT(コーンビームCT)は、口の中や顎の状態を立体的に映し出す専用の三次元撮影機器です。
円すい状のX線を360度方向から照射し、回転しながら撮影したデータをコンピューターで立体画像として再構築します。
座ったままや立ったままで撮影できるため、医科用CTと比べて短時間で済み、身体への負担も少ないのが特徴です。
歯科用CTでわかること
歯科用CTでは、以下のような詳細な情報を確認できます。
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顎の骨の形状、厚み、高さ、密度
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神経や血管の位置、上顎洞との距離
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骨の欠損や炎症などの病変の有無と範囲
これらの情報をもとに、インプラント治療が適しているかどうかを判断し、骨造成(GBR)などの処置が必要かどうかを検討したりすることが可能です。
■レントゲンとの違い|CTは重なりをなくして立体的に見える
インプラント治療では、術前に「レントゲン」や「CT」を使って顎の状態を調べます。
どちらもX線を利用した画像診断ですが、見える範囲や情報には大きな違いがあるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
レントゲンは「平面的な画像」
パノラマレントゲンやデンタルX線は、二次元(平面)で撮影される画像です。
顎や歯の全体像を手軽に確認できますが、骨の厚みや神経の正確な位置までは把握しづらいという限界があります。また、歯や骨が重なって映るため、奥行きのある情報は見えにくくなることもあります。
CTは立体的に見るための三次元画像
歯科用CTは、360度の方向から撮影したデータをもとに、立体的な画像を再構成します。
骨の内部構造や神経の位置、上顎洞の形などを断面画像や3D画像で詳しく確認できるのが特徴です。
そのため、インプラントをどこに・どの角度で・どの深さまで埋め込むかを、術前にシミュレーションすることができます。
従来のレントゲンでは把握が難しかった「見えにくい部分」を、立体的に可視化できるのが歯科用CTの大きな強みです。術前に神経や上顎洞の位置関係を正確に把握しておくことで、手術中の偶発的な損傷や合併症のリスクを未然に防ぎやすくなります。
■インプラント治療においてCT検査が重要な理由
1. 神経損傷や合併症リスクを未然に防ぐ
インプラント手術では、神経や血管を傷つけることで生じる合併症は、できる限り避けたいリスクです。CT画像を活用することで、下顎の「下歯槽神経(かしそうしんけい)」や、上顎の「上顎洞(じょうがくどう)」との距離を三次元的に正確に把握できます。
あらかじめ埋入する位置や角度、深さを細かく設計できるため、手術中の偶発的な神経損傷や出血といったトラブルを未然に防ぎやすくなります。
2. 骨の質・量を評価し、治療可否を判断できる
インプラントを埋め込むには、骨の高さや幅、密度などの条件がそろっていることが大切です。CT検査では、こうした骨の状態を立体的に評価できるため、インプラント治療が可能かどうかを見極めることができます。
骨量が不足している場合には、骨造成と呼ばれる骨誘導再生療法(GBR)やサイナスリフトなどの前処置が必要かどうかも診断できます。無理のない治療計画を立てるうえで、欠かせない情報が得られる検査です。
3. サージカルガイドとの連携で計画通りの埋入が可能に
CT検査で得た立体データを活用すれば、「サージカルガイド」と呼ばれる手術用テンプレートの作製も可能になります。これは、あらかじめ設計した位置・角度・深さでインプラントを埋め込むためのガイド装置です。
術中もこのテンプレートに沿って処置を進められるため、事前のシミュレーション通りに再現性の高い手術を行うことができます。
■歯科用CTのメリット|精密で再現性の高い治療計画に
術前にシミュレーションできるから精度の高い治療が期待できる
インプラントをどの位置に、どの角度で、どの深さまで埋め込むかを、術前に三次元画像上で正確にシミュレーションできることは、歯科用CTの大きな強みです。
手術中に歯科医師の勘や感覚だけに頼らず、計画通りに再現性の高い処置が行えることで、治療の精度が高まり、患者さんにとっても安心につながります。
神経や血管の損傷リスクを軽減できる
神経や血管の位置を立体的に把握できることで、手術中の損傷リスクを事前に避けやすくなります。さらに、治療計画に沿ってスムーズに手術を進められるため、出血量の軽減や手術時間の短縮にもつながる可能性があります。身体への負担を少しでも減らすためにも、CTによる術前評価は有効です。
被ばく量が少なく、体への負担も抑えられる
歯科用CTは撮影範囲が限られているため、医科用CTと比べて放射線の被ばく量が少ないとされています。
一般的に、医科用CTの約1/10〜1/30程度に抑えられるといわれており、必要な部位だけを撮影できるのも特徴です。ただし、妊娠中の方は事前に医師へお申し出いただき、撮影の可否を判断してもらうようにしましょう。
■CT検査の注意点
顎の状態によってはレントゲンのみで足りるケースも
すべてのケースでCT撮影が必要になるわけではありません。
顎の骨に十分な厚みがあり、神経や上顎洞との位置関係が明確な場合には、パノラマレントゲンのみで診断が可能と判断されることもあります。
患者さん一人ひとりの状態に応じて、必要な検査を適切に選択し、判断します。
金属の被せ物がある場合は画像の乱れに注意
口の中に金属製の被せ物(クラウン)やブリッジがある場合、CT画像に「アーチファクト」と呼ばれる乱れが映ることがあります。その影響で、一部の部位が見えづらくなる場合があるため、撮影前に医師へ申告しておくことが大切です。
必要に応じて別の角度から撮影するなど、適切な対応が取られます。
妊娠・授乳中は撮影前に必ず医師へ相談を
歯科用CTは被ばく量が少ないとされていますが、妊娠中または授乳中の方は必ず事前に医師へご相談ください。
お身体の状態や検査の必要性をふまえたうえで、医師が撮影の可否を判断し、安全に配慮した対応を行います。
■見えない不安に備えるために|CT検査で安心につなげるインプラント治療
インプラント治療において、骨や神経といった見えない情報を正確に把握することは、術後トラブルを防ぐためにとても重要です。歯科用CTは、こうした情報を立体的に可視化し、治療の精度と安全性を高めるための有効な手段です。
当院では、CTによる精密な診断とシミュレーションに基づき、一人ひとりの骨の状態に合ったインプラント治療をご提案しています。
「CTって本当に必要なの?」「怖い検査ではない?」と疑問をお持ちの方も、まずはご相談ください。
